Luciana Janaqui
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mi El Camino
2018, 他者の記憶を元にして行った巡礼とその記録


私は2018年の秋に「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」を所謂「フランスの道」に沿って歩いた。31日間の道中では、事前に収集して
プリントした過去の日本人巡礼者の日記(主にネット上のブログ)を参照しながら、彼らの経験を私の身体によって踏襲・追憶・再演したうえで、
毎晩その日の出来事を日記張に記録した。既に他者が書いた(かつて経験され語られた)事柄はプリントされた彼らの文章を物理的に切り貼りす
ることで、私だけに生起した(まだ語られていない)経験は手書きで記述していった。

Tokyo Arts And Spaceにて2019年に行われた展示では、こうして新たに生まれた「私/彼ら/私たち」の日記を起点として、巡礼の記録を再構成し
た。日記を朗読する映像では、淡々とした声によって複数の主体に属した物語が均一化されているが、他者の文章を使った箇所には字幕があり、
手書きで記された箇所には字幕がない。ほか、31日間の巡礼を記録した実際の日記帳、私自身が巡礼中に撮影した写真の表面に過去の巡礼者たち
の痕跡(彼らが撮影した写真に基づいて私が描いたドローイングの断片および彼らが記した言葉の断片)をコラージュしたもの、巡礼手帳、巡礼
証明書、巡礼中に使用していた現地のSIMカード、宿の寝室で一緒だった巡礼者のいびきの音声、ホタテ貝などを展示した。

このプロジェクトでは、異なる主体の記憶を私自身の身体を通して再演することで、ある事柄にまつわる集合的な記憶のあり方、その所有者性の
不安定さを観察した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
トーキョーアーツアンドスペース本郷における「予兆の輪郭」展(2019)での展示風景|撮影:高橋健治|画像提供:Tokyo Arts and Space